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IMUG 2023 第1回ビジネスイノベーション分科会情報感度とビジネス洞察力を高めるメディアの使い方とは

NTTデータ イントラマートのユーザー会「IMUG」は7月4日、今年度最初のビジネスイノベーション分科会をオンラインで開催しました。分科会はIMUGの活動の柱であり、ビジネスイノベーション分科会は「イノベーター人材の研究」がメインテーマです。ビジネスイノベーションや業務改革・改善の手法や発想法、ビジネストレンドなどを学び、実践することで、IMUGユーザーがビジネスをデジタルで変えていくために必要な人材を育てる支援をしていきます。


メディアをバランスよく使って広い視野を獲得

第1回の今回は、日本経済新聞社教育事業ユニット研修・解説委員の若林宏氏を講師に迎え、座学と演習・グループディスカッションから成る「情報感度ワークショップ」に取り組みました。世の中の変化や経済動向を見極め、情報感度とビジネス洞察力を高めることを目的としたプログラムです。

日本経済新聞社 教育事業ユニット研修・解説委員 若林宏氏

具体的な達成目標は、次の3点です。
(1)さまざまなメディアの特性を理解し、ニュースの背景の探り方やメディアを使った情報収集・分析方法を身につける
(2)複数の情報から法則性を見出して経済や社会のトレンドを読み、発想力を向上させる
(3)自分なりの“仮説”を立てて情報に接し、物事や事象の先を読み、ビジネス雑談や新規提案に役立てる

ワークショップではまず、情報収集の重要なソースとなるメディアの特性について下記の通り若林氏がレクチャーしました。
◇ 歴史が長い新聞や雑誌などの紙メディア
  強み:一覧性に優れており、情報の信頼性もある程度担保されている
  弱み:有料、保存や検索は苦手で速報性も乏しい
◇ 現代のメディアとして長らくメインストリームだった映像メディア
  強み:速報性に優れ、映像を使ったリッチなコンテンツを届けられる
  弱み:保存や検索との親和性が低いのは紙メディアと同様

近年、多くの人にとって最も身近なメディアとなったネットメディアについては三種類に大別して解説しました。
◇ Yahoo!ニュースなどのポータルサイト
速報性に優れていて、短文で情報を把握できるように分かりやすさが重視されている
◇ 経済ニュース
新聞社や通信社から提供されるため、情報の信頼性も担保されている
◇ SNS
情報が双方向に流れるためネット世論が分かるのが特徴
ただし、大きい声で主張された意見が拡散されやすいなど、ネット世論が必ずしも全体を代表しているわけではないことや、フェイクニュースが流れやすい点にも注意が必要

新聞系メディアの電子版やNewsPicksなど自社でコンテンツをつくる機能があるネットメディアにも言及しました。専門情報が豊富で、紙メディアの弱点だった速報性、保存性、検索性の課題も解決されています。「ソーシャルネットワーク的な機能も備え、識者のコメントやユーザーコミュニティ内の情報交換も参考になります」(若林氏)

これらの解説を踏まえて、それぞれの参加者が日常的にビジネス情報の取得に利用している複数のメディアについて
「利用頻度の高低」と「情報の専門性の高低」を軸に4象限マップにプロットしてみるという演習に取り組みました。若林氏は、「現在のビジネスシーンでは、役職や職種、年齢を問わず、新しい価値を創り出そうとする気概と行動力のある人材が求められています」とした上で、そうした人材になるためには、広い視野、高い視座、鋭い視点が必要と強調。「皆さん、いろいろなメディアを活用されていますが、4象限マップの一つの方向に偏り過ぎないようにメディアを活用することが、そうした能力を養うことにつながります」と説明しました。

トレンドを大きな流れで理解するために役立つ「帰納法」

続いて若林氏は、経済や社会のトレンドを読み、ビジネスに生かすための記事の読み方を解説しました。まず基本的なルーティーンとして、関心のあるテーマについては経済ニュースなどを毎日読み、日々の変化をつかむとともに、さまざまなメディアの記事に目を通して多角的に理解することが重要だといいます。さらに、気になるニュースは新聞の電子版などで記事検索してこれまでの報道もチェックし、背景や過去を知るために積極的に情報を探すことも有効だとしました。

なぜこうした情報収集が重要になるのでしょうか。若林氏は「過去、現在、未来はつながっており、過去を踏まえた現在のトレンドを大きな流れとして理解することで、未来のシナリオを描けるようになる」と説明。そして大きな流れを読む手法として、個々の具体的な事例や経験を基に一般的な結論を導く「帰納法」が役に立つと説きました。

過去・現在・未来はつながっている!帰納法の解説より

「例えば取引先のA社について、社員が辞めている、在庫が増えている、資金繰りが苦しい、といった情報が入ってきたとします。これらの情報に共通するのは、A社の経営状態の悪化を示している可能性が高いということです。一つ一つの情報を点とするならば、点と点をつなげて線にする、さらには面や立体として分析、理解する力が帰納的推論力です。こうした手法で現状をいち早く把握できれば、課題があっても迅速に手を打つことが可能になります」
若林氏は大きな変革を迎えている自動車業界を題材に、ビジネスにおける具体的な帰納的推論の事例も紹介しました。
「CASE(Connected、Automated/Autonomous、Shared&Service、Electrification)」をキーワードに従来の市場構造に縛られない企業間の提携やコラボレーションが生まれているトレンドを複数の記事から導くことができると説明。参加者はこれらの講義を受け、取引先との雑談にトレンドの考察を盛り込む個人演習や、日経MJの「ヒット商品番付」を基に消費のトレンドを考察するグループワークにチャレンジしました。

未来予測は「演繹法」、帰納法と組み合わせて精度の高い仮説に

プログラムの最後のセクションでは、記事情報などを基にこの先の変化を予測してシナリオを描き、対応するためのメソッドを学びました。若林氏は「未来は一つではないので、特にビジネスでは理想的なシナリオに基づくプランだけでなく、複数のプランを用意する必要があります」と説明。そのための有効な手法として、法則や一般的な原則を個別の事象に当てはめて妥当な結論や仮設を導き出す「演繹法」が有効だとしました。

具体的にイメージしやすい例示から学ぶことが出来ました!演繹法の解説より

「帰納法の説明時の事例を題材にすると、まずA社の経営状態が悪化しているのではないかという仮説を立てます。その仮説を検証するために、人材は流出していないか、過剰在庫を抱えていないか、資金繰りはどうなのかなどを検証してみて、それぞれ悪化していることが確認できれば、仮設が正しいことになる。これが演繹的推論力です」

個人演習では原油相場を題材に、この演繹的推論力を使って国際相場を読むための基本的な考え方を学びました。さらに、ここまでの学びの総まとめとして、顧客への新しい提案のための仮設づくりにグループワークで挑戦しました。若林氏は「精度の高い仮説を基にした提案は顧客に大きな利益をもたらします。仮説をつくる際には帰納法、その検証に演繹法を使い、両方を組み合わせて仮説を立てることで、説得力を高めることができます」と解説しました。

メディアを通して得られる情報をどのようにビジネスに生かすのか、普段はあまりロジカルに考える機会がないかもしれません。今回のように、体系立てて手法を学び、個人演習やグループワークを通じて実際に手を動かしてもらうという体験は、参加者の皆さんにとっても得るものが大きかったようです。

【参加者の声(アンケートより)】
ワークショップを通じて、周囲の方のアンテナ感度の高さに刺激を受けました。日常業務に没頭すると、業務に関係する事柄ばかりに注意を向けてしまいがちですが、もっとそれ以外の事柄にも目を向ける必要があると痛感しました。また、何かのために上層部を説得する際は、大局的な世の中の流れを踏まえつつ、個別具体的に自社が取り組むべきは何かを訴えるのが効果的であると理解しました。

イノベーションに役立つ内容で、勉強になりました。帰納法と演繹法、仮説を生み出し、検証することが、業務に活かせそうだと思いました。

トピックスやニュースから共通キーワードを見つけてビジネス雑談に繋げたり、大きな方向性を見つける方法は大変勉強になりました。現時点のトレンドを理解し、仮説を立てみるやり方は、今後活用したいと考えております。もし、立てた仮説が間違っている場合は別の仮設を立てるという考え方もためになりました。

(IMUG事務局編集部)

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