「intra-mart LIVE 2023」IMUGパネルディスカッション テクノロジーの進化とビジネス環境の激変に向き合う「新・情シス」とは
NTTデータ イントラマートは2023年11月20日から22日の三日間にわたって、年次イベント「intra-mart LIVE 2023」をオンラインとオフラインのハイブリッドで開催し、おかげさまで盛況裡に幕を閉じました。
オフラインのプログラムでは、恒例となったIMUGセッションにも多くの方に参加いただきました。IoTNEWS代表/株式会社アールジーン代表取締役でデジタルソサイエティ研究家の小泉耕二氏をモデレーターに迎え、「#新・情シス×IMUG企画講演 進化する情報システム部門 『新・情シス』に迫る、DX実践の最前線とは」と題してパネルディスカッションを行いました。生成AIが象徴的ですが、新しいテクノロジーが社会や法人向けIT市場の変化を加速させている現在、情報システム部門はどのように進化すべきか。情シスとして意欲的な活動を展開し、IMUGの活動にも積極的に参加してくれている株式会社フォーバルテレコムの内海義朗氏、日立造船株式会社の折橋正俊氏がパネリストとして参加し、両社の取り組みの最前線を存分に語ってくれました。
DX認定取得企業の2社から情シスのリーダーが登壇
当日はパネルディスカッションに先立ち、IMUGの事務局長である久木田浩一がIMUGの現状とセッションの趣旨を説明しました。今年度、発足から3年目を迎えたIMUGは、月に一回以上のペースでイベントを開催するなど活動を一層活発化させています。久木田は「さまざまな業態・業種の多様なお客様同士に交流していただき、intra-martの活用方法にとどまらず、幅広く新しい発見や気づき、お悩みの解決、DXの推進に役立てていただいます」と説明。未参加のユーザー企業にもぜひ気軽に参加してほしいと呼びかけました。
パネリストとして登壇してくれたフォーバルテレコムの内海氏、日立造船の折橋氏は過去のIMUGのイベントでも登壇しており、IMUGの活動をけん引してくれています。また両社とも情報システム部門が社内のデジタル化やDXをリードする役割を積極的に果たしていることで知られ、DX認定取得企業でもあります。パネルディスカッションの冒頭では、両氏がそれぞれの情シス部門の現況について説明してくれました。
フォーバルグループは主に中小企業向けに電話/通信サービスやICT製品などを販売・提供しており、フォーバルテレコムはその中でサービス、ソリューションの企画や請求関連業務を担っています。特徴的なのは、そこで蓄積した業務ノウハウをシステム化して社内で活用しているだけでなく、外販もしていることです。
その代表的な製品が、intra-martを基盤として採用した「CollaboOne」で、見込み情報の管理から顧客管理、受注管理、料金計算、請求書発行、決済代行までサブスクリプションビジネスに必要な機能をワンストップで提供しているクラウドサービスです。内海氏は、社内システムの開発・運用といった従来の情シスとしての業務から、商品開発とその営業まで管轄しているとのこと。「情報通信業に特化した自社の業務ノウハウをシステム化していることを評価してもらい、外販した際には競合他社にも採用してもらっています」と同社のユニークなビジネスを説明しました。
一方の日立造船は、ごみ焼却発電プラントで世界一位の納入実績を誇る老舗の機械・プラントメーカーです。折橋氏のプレゼンではおなじみですが、社名から連想される事業・組織とは違って「あまり知られていないのですが、実は日立製作所グループでもなく、既に造船事業も手掛けていない」というご紹介とともに、2024年には「カナデビア株式会社」に社名を変更することもお話いただきました。
折橋氏は同社のDXの取り組みについて「(一般的にデジタルとは距離が遠いように思われている)重工の会社だからこそ、デジタルに合わせて事業を変化させていくこと、ビジネスとシステムを一体で考えていくことで競争力を高められるというのが当社の方針」と説明。情シスの活動としては、各業務部門と積極的にコミュニケーションを取りながら、BPMN(世界標準の業務記述法)で業務プロセスを可視化するなど業務分析を主導した上で、デジタル化や業務プロセス改革を進めているそうです。
「攻めの情シス」がこれからのビジネスの競争力を左右する
パネルディスカッションは小泉氏が投げかける「お題」について内海氏と折橋氏が自社の取り組みを説明するかたちで進行しました。主なやり取りを以下でご紹介します。
Q.生成AIやブロックチェーンなど、新しい高度なITが登場、普及してきているが、そうした技術にどう向き合っているのでしょうか?
内海 AIの活用についてはDX推進室という部署をつくって取り組みを進めています。特に力を入れているのはChatGPTの活用で、お客様からの問い合わせへの応答メールや議事録の作成に使うことを模索しています。また、展示会で収集した名刺の情報を取り込んで、来場者の所属企業規模の傾向と、関心を持ってもらった商材の相関関係をChatGPTに分析させて、商材説明の人員配置を最適化するといった使い方もしています。
先進テクノロジーの活用でも、自社の新しいビジネス創出や業務改善に役立つかという視点はもちろん、構築したソリューションを最終的に外販できるかを当社では大事にしています。情シスはその目利きをする役割を担っています。
折橋 専門チームが本業でのAIやIoT活用を進めており、重工系の機械の運転支援や保守の高度化に役立てるソリューションづくりに取り組んでいます。情シスとしては、ERPのFAQの代替として、生成AIを使ったチャットボットをつくるなどの取り組みを進めています。新しいテクノロジーは試せるところで積極的に試して使っていこうという雰囲気は全社的に醸成されています。
当社の情シスはユーザー部門としっかりコラボレーションして業務フローを書いたり業務分析したりしているので、社内の業務を一番広く詳しく知っていると評価してもらっています。新しいテクノロジーの活用も、そうした信頼関係とユーザー部門の業務に対する情シスの理解度が重要になると考えています。
Q.内海さんも折橋さんも、業務をよく知っていて、社内のキーマンともつながっており、システムも理解しているベテランですが、ご自身の属人的なノウハウやスキルが現在の情シスの活動を支えている側面もあると思います。次世代の情シス人材をどう育てようと考えていますか?
折橋 若手を現場に連れて行って、自分でコミュニケーションを取らせるようにしています。会社として何を売って、どんな価値を提供しているのか理解することが大事。そうした経験を積み重ねることで、ユーザー部門が困っていることを理解できるようになると思っています。
内海 私の統括している業務が広くなり過ぎてしまっているので、それをそのまま誰かに引き継ぐのは現実的ではないため、分業制で人材育成に取り組んでいます。情シス的な役割の部分で言うと、業務を理解した上で社内システムを設計する人材が重要ですね。
Q.情シスの人材はITだけでなく自社の業務を深く知らなければならないというのは共通の指摘ですが、そんな中でローコード/ノーコード開発ツールを使う恩恵についてはどう考えますか?
内海 事業部がやりたいことをすぐに実現したり、自社ならではの細かな要件に対応したりするスピード感という観点では、内製でローコード開発するのが一番いいかたちだと考えています。実際、当社でもローコード開発はさまざまなシステムに積極的に採用しています。また、ローコード開発における基本的なルールは決めて、そこから逸脱しないように開発を進め、品質を保つ工夫はしています。
折橋 ローコード開発基盤としてintra-martを使って内製化に取り組んでいます。ユーザーにヒアリングして業務分析を行い、「IM-BPM」で業務プロセスを記述したら、データベースを設計する前に「IM-BloomMaker」でまずアプリケーション画面のモックを作成するという手順で進めているのが特徴です。このやり方は以降の改修が非常に少なくて済むというメリットがあります。システムは作って終わりではなく、使ってみながら、環境の変化にも合わせて継続的に改修していくもの。変化のスピードは加速しており、もはやローコード/ノーコード開発による内製化なしでは対応が難しくなっていると感じます。
Q.これからの情シスが果たすべき役割についてはどう考えていますか?
折橋 新しいことに積極的に挑戦していかなければならない部署だと思っています。ITの活用はビジネスのためであって、既存のシステムの安定運用は大事ですが、それが目的化してしまっては本末転倒です。情シスが守り一辺倒になってしまっては、本業のビジネスで他社に勝てなくなる時代になっていくはずです。
フルスタックの知識があるに越したことはないですが、ITはどんどん複雑化していて、現実的には全員がフルスタックエンジニアになるのは難しい。業務をどう変えていくか、ビジネスをどう変えていくかという目的意識の下に、必要なITの知識やスキルを獲得して、自分たちの手を動かしていくという姿勢が、攻めの情シスには必要だと思っています。
内海 従来の情シス的な業務と、外販するシステムを扱う業務があり、どうしてもお金を生む業務にメンバーの意識も向きがち。フォーバルテレコムの社員としてITを通して「業務」に向き合った先に、汎用的な価値のある商材を開発できているというバランス感覚は浸透させたいので、業務のローテーションなども検討していきたいと考えています。社内システムも外販しているシステムも、基本的な構造は同じなので、そうした取り組みがやりやすい環境にあることはポジティブに捉えています。
Q.「intra-martのここを評価している」というポイントを最後に一言。
内海 CollaboOneの開発基盤としてintra-martを採用したことで、バージョンアップに合わせて継続的に新しいテクノロジーを活用できています。ローコード開発基盤としても使いやすく、ユーザーの要望にもフレキシブルに対応できる点は、CollaboOneの製品としての強みにもつながっています。
折橋 ユーザー会であるIMUGがすごくいいです。ユーザー同士でintra-martの使い方や課題などについてざっくばらんに話ができる場があることで、業務のヒントを得られることもあります。プロダクトとしても、intra-martはデータベースの構造などがオープンですし、いろいろな面でオープンな文化があるところに魅力を感じています。
以上、当日の様子のレポートでした。
IMUGではユーザーさんの取組み事例紹介を中心に、DXを学び合うための様々なイベントを実施しております。皆さんにとって、たくさんの情報が集まる学びの場になるよう盛り上げ参りますので、今後の活動にもぜひご期待ください!
(IMUG事務局編集部)
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