IMUG 2024 Open intra-mart “Meet Up@おおさか” 「ローコード開発ツールの活用」を語る(前編)
NTTデータ イントラマートのユーザー会「IMUG」は6月21日、「IMUG2024 Open intra-mart MeetUp@おおさか」を開催しました。Open intra-mart MeetUpイベントはintra-mart活用のポイントなどをオフラインで共有し合うイベントです。
今回は「ローコード開発ツールの活用」をテーマに、ユーザー同士の交流を通じてローコード開発ツールの活用イメージを深める目的で開催されました。intra-martを使った内製開発の進め方、ローコード開発ツールの具体的な活用法に興味がある方にとっておすすめの内容です。
リアル開催ならではの盛り上がりをみせた、当日の様子をレポートします。
日立造船様「DXの取り組み」について
MeetUpが始まり、今回、会場をご提供いただいた日立造船株式会社(以下、日立造船)にて取締役 常務執行役員 ICT推進本部長を務める橋爪宗信氏の講演が始まりました。
民間初の造船場として1881年創業の同社。現在は日立でもなければ、造船業も行っていない。「日立造船 DXの取り組み」は、エネルギーと水を中心とした環境分野、機械・インフラ分野、脱炭素分野と多岐に渡る各分野を横断して推進されているとのこと。
また、これまでは「ものづくりとエンジニアリング」の企業として強みを発揮してきた日立造船ですが、近年はデジタル領域にも勝機を見出しているのだといいます。橋爪氏は展望を、3つのDX戦略と共に語りました。
橋爪氏 我々が打ち出しているDX戦略は「①企業DX ②DX基盤 ③事業DX」の3つです。それぞれを細かくみると、サプライチェーンの効率化やインフラ・セキュリティの強化、DX人材の育成にIoT、DS、AIの活用、新規ビジネスのインキュベーションなどがあります。そして、開発の共通基盤として活用しているのがintra-martです。
ここで、intra-martを導入した際に検討したのは「価値を速く届けること」を実現し得るシステムかどうかだったといいます。内製化の取り組みにも力を入れ、新しいシステムを作りたいと考えた場合に「まずはintra-martで作る」と考える文化が育まれたそうです。
橋爪氏 日本は、IT人材がIT関連企業に従事する割合が大きいことが特徴です。しかし欧米では60%前後がユーザー企業(事業側)で働いています。内製を続けていれば、IT企業に負けない技術力が身につくことは、日立造船がすでに経験していること。NTTデータ イントラマートのサポートのもとintra-martを活用してIT人材の内製化ができれば、エコシステムが成立すると私は考えています。
橋爪氏は最後に、「大切なことは、まずどうすればお客様が喜んでくれるのかを考え、その手段を自らintra-martで開発すること。今日のような場はそのためにあるのだと思います」と締めくくりました。
日立造船流ローコード開発のポイント~価値を速く届けるための共創と学び~
続いて、同じく日立造船株式会社より、ICT推進本部 高度情報システム部 デジタル推進グループ 主管技師を務める折橋正俊氏の登壇です。テーマは「日立造船流ローコード開発のポイント~価値を速く届けるための共創と学び~」。intra-martを活用し、要件定義から実装するまでのプロセスがまず公開されました。
折橋氏 私たちが特に大切にしているのは、現状の業務可視化や新業務のプロセスを検討する際にAs-Is / To-BeをBPMNにて記述・策定することです。BPMNで書き出すことで業務における作業イメージはより具体的になり、業務のムダや真の問題点も明らかになる。結果的に手戻りも少なくなるメリットがあります。
以降、システム開発は「プロトタイプ検証→再検討・再開発→MVP[*](本開発)」の順で進めていくといいます。完璧だと思えるものを最初から作ったとしても、完成の時点から問題点が露わになり、陳腐化が始まってしまう。そういった事態を避けるためにも、小さく始めて徐々に改良・追加開発することが重要だと折橋氏は強調します。
*MVP:Minimum Viable Product(顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)
では、実際の開発シーンで日立造船が意識していることは何なのでしょう。ローコード開発のポイントとしてスクリーンに映し出されたのは「依頼者(業務部門のユーザー)を仲間にする」の文字でした。
折橋氏 依頼者は、普段業務で扱っているデータが画面上に取り込まれて動く様子をみると、目の輝きが変わるのです。自分事になるのですね。大事なのは依頼者との主従関係になるのではなく、信頼関係を結び、仲間として共に開発することだと私は考えています。その後のプロセスは依頼者の思いを具現化してシステムに落とし込むわけですが、頑張りすぎないことがコツです。思いは変化していくので、小さく作り、共有して、改善するのサイクルを繰り返します。
最後に折橋氏は、「学ぶ(まなぶ)と学ぶ(まねぶ)」と書かれた投影資料を映し出しました。「依頼元の仕事を学ぶ。(まなぶ)」とは、依頼元の業務全体を捉えることの重要性を示唆したもの。解決策のヒントは、業務の前後にある工程を知ることで得られることもあるといいます。
例えば「ハンコ付きのPDFをデータ化するためにRPAを活用したい」と依頼があったとします。しかし、前工程でエクセルを使っているのであれば、そもそもRPAは不要かもしれません。
そして「開発ツールの仕組みを学ぶ(まねぶ)」とは、自力だけでなく社内外の力を借りることの大切さを表現したもの。特にintra-martは他者の作ったプログラムが閲覧可能なほか、『NTT DATA INTRAMART Tech』やIMUGのサポートを得ることもできます。
最後は「日立造船はお客様の困りごとを解決した結果として、1兆円企業になることを目指しています」とデジタルの力が果たす役割の大きさに触れ、講演を終えました。
入社5か月のメンバーにも出来た!~金鳥情シス内予実管理システムのローコード 開発ツール挑戦記~
講演パートの最後を締めくくるのは、「金鳥」ブランドで歴史を築き上げてきた大日本除虫菊株式会社の矢野智弘氏と安積大樹氏です。intra-martにはこれまで、約50のシステム(総プログラム数は約700本・画面数にして約350画面)を開発する上でお世話になっていると関係性を話し、さっそく本題に突入。
テーマは「入社5か月のメンバーにも出来た!~金鳥情シス内予実管理システムのローコード開発ツール挑戦記~」です。
開発に馴染みのなかったメンバーが、なぜたった5ヶ月で社内の予実管理システムを作り上げることができたのか。intra-martを導入したばかりの企業にとっては非常に気になるテーマです。まずは矢野氏から、内製で開発に踏み切った背景が語られました。
矢野氏 私たち情報システム部の中では、年間予算の進捗をエクセルで管理していたため、期末の差異報告資料を作成する際にとても時間を要していました。この課題を解決するために予実管理システムをintra-martで作ったわけですが、そこには3つの理由がありました。
1つは部署内で使うシステムのため、バグや手戻りが発生しても修正が利くこと。2つ目に、開発を通じてIM-FormaDesignerやIM-BloomMaker、IM-LogicDesignerが学べる点。3つ目に、これらの経験を得ることで社内各部署の要望に対する個別開発や、全社展開を可能とする礎が築けるのではと考えました。
会場では、実際のエクセル管理の様子を交えながら具体的な課題点を解説。その後はマイクを安積氏が握り、intra-martで開発した画面の紹介に移りました。Before Afterも含めた解説に、ローコード開発の魅力が伝わります。
講演が終了すると、なんと現地参加の方へ金鳥の商品がプレゼントされるとのアナウンスが。休憩時間には歓談の時間が流れ、参加者同士のコミュニケーションが活発になる様子も伺えました。
以上で講演パートは終了。参加者から寄せられた質問もWeb上にまとめられ、次のパネルディスカッションで回答を待つことに。後編に続きます。
(IMUG事務局編集部)