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IMUG 2022 第2回「業務プロセス改革分科会」Day1レポート

「DXへの第一歩はBPMのサイクルを確立することから」

NTTデータ イントラマートのユーザー会「IMUG」は11月25日、今年度2回目の「業務プロセス改革分科会」を開催しました。業務プロセス改革分科会は中期の活動ロードマップを策定しており、2022年度をステージ1と位置付け、「改革文化の形成」「改革人材の育成」「デジタル業務改革の基本」「世界標準の業務記述法」についてベーシックな知識に触れていただくことができるプログラムを提供していきます。

今回は公益社団法人企業情報化協会の横川省三氏(元日本BPM協会)を講師に招き、「デジタル業務改革/BPMの概要」について解説いただきました。成果を得られる業務改革のポイントや有効な方法論、業務改革におけるデジタル基盤の位置づけ、業務プロセスの適切な可視化に必要な世界標準の業務記述法「BPMN」の概要など、デジタル業務改革の全体像を捉えるための基礎的な知識に触れることができたのではないでしょうか。当日の内容を振り返ってみましょう。

BPMは業務プロセスのPDCA

横川氏がまず強調したのは、「改善」と「改革」の違いについてです。「現状のルールや方針を変えてまで変更するのが改革で、ルールはそのままで変更するのが改善」だと説明。前者は多方面の調整が大変で、改革対象業務のオーナー(部課長クラスなど)のイニシアティブがなければ進まないのに対して、後者は現場にある程度丸投げできてしまいますが、易きに流れるだけでは成果も小さくなるばかりです。「業務改革を目指していたのが、最終的に個人作業の改善にとどまってしまうのはよくあるケース」だと指摘しました。

業務改革で成果を出すための手法として有効なのがBPMです。BPMとはBusiness Process Managementの略で、「業務プロセスのPDCAサイクルである」(横川氏)と考えると分かりやすいかもしれません。業務プロセスを可視化(P)し、プロセスをチームで共有して実行(D)、業務の実行状態をモニタリング(C)、モニタリングデータ等の実績を分析して改善策を検討し(A)、改善策を組み込んで業務プロセスを再設計(P)するというサイクルを回していくのが基本的な考え方です。

業務プロセスの可視化にあたっては、前述した世界標準の業務記述法であるBPMNを使って、「多くの人に共有しやすいかたちで表現することが大事」だと横川氏は強調します。「BPMNを使ってしっかり業務フローを書きあげれば、BPMS(Business Process Management System)というシステムに実装し、業務プロセスをデジタル化して管理できるようになる。デジタル基盤上で実行結果の記録やモニタリングも可能になる」として、デジタル業務改革の準備には、BPMNとBPMSの活用が重要なポイントになることを示唆しました。ちなみにNTTデータ イントラマートのBPMS製品である「IM-BPM」は、日本のBPMS市場における代表的な製品として大きなシェアを獲得しています。

BPMSはDXの基盤になる

BPMが企業の経営やビジネスにとってどのような意味を持つのかをはっきりさせるために、横川氏は「BPMとDX(デジタルトランスフォーメーション)の関係」についても言及しました。

経済産業省の「DXレポート2」では、DXに至るステップとして、アナログ・物理データをデジタルデータ化する「デジタイゼーション」、個別の業務・製造プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」という前段階があるとしています。「業務プロセスの可視化に着手することがデジタイゼーションの第一歩になり、それをBPMSに載せてデジタル基盤上で管理する環境を整えることでデジタライゼーションのステージに到達できる」(横川氏)とのこと。DXにはさらにデジタルネイティブなビジネス戦略や経営戦略が必要ですが、DXのステージにおいても継続的な競争力の向上には業務や組織のを構築してPDCAを回していくことが不可欠であり、BPMSはその基盤にもなります。横川氏は「BPMサイクル(PDCA)を繰り返さないと、DXに取り組む際の各ステージにおける課題を乗り越えていけない」と力を込めました。

具体的なBPMの方法論にも触れています。横川氏が強調したのは、重要な業務プロセスに絞って、段階を踏んだ取り組みを進めることの重要性です。「あらゆる業務を可視化しようとすると膨大になり過ぎるので、業務体系を整理した上で本当に改革したい業務を抽出することがまずは必要。BPMの実践にあたっては、現在の業務のAS-ISを把握してBPMNで可視化したら、いまのやり方がどういう理由で成立したのかという深層要因を深掘りして、どんな不都合があり、何をどう変えるべきなのかというシナリオをつくることが最も重要になる。これを経て、TO-BEの業務フローをようやく描けるようになる」

業務プロセスのデジタル化も同様で、「現在のオペレーションの状態にもよるが、一足飛びにエンド・トゥ・エンドでプロセスをデジタル化するのは難しい。コンテンツ(帳票・データ)、業務フロー(分担・連携)、業務ルール、作業方式(タスク)を一つ一つデジタル化して、だんだんレベルアップするシナリオが必要になる」としました。

また、BPMNにも、そうした段階に応じた複数の「書き方」があるとのこと。「作業の順番や条件判断などを現場の業務設計者がザックリ書けばいい『記述モデル』(レベル1)、詳細な制御機能、ルールを細かく書く『分析モデル』(レベル2)、そしてBPMSへの実装を前提にしており、表記法や表現の厳密性が求められる『実行モデル』という段階がBPMNにもあり、現場がササっと書いたものがそのままアプリケーションになることはない。段階を踏んでAS-ISとTO-BEを整理し、記述モデルのレベルが上がるにつれて業務部門とシステム設計者が連携しながらBPMの基盤を整備していくかたちになる」

顧客接点に係る業務のTo-Beの検討が大きな成果につながる

このほか、プロセスを標準化してBPMの効果を出しやすい業務の特性や、事業を構成するさまざまな業務を機能階層別に分解した場合にどの階層の業務をBPMの対象とすべきかなども解説し、講演終了後は参加者から多くの質問が寄せられました。Q&Aのやり取りの一部をご紹介します。

Q. BPMの対象業務としては、どこから手を付けるべきか?
A. 顧客接点に関わる業務から取り組むことを推奨している。顧客からの問い合わせ、注文などに対してどう対応できているかというところからスタートするのがいい。理由は成果が出やすいから。顧客対応のスピードはデジタル化が進んだ現代では大事な要素だが、これがまず向上する。結果として顧客満足度が上がって売り上げが増えたり、効率化によりオペレーションの原価が下がったりといった効果が見込まれる。

Q. BPMはヒューマンエラーの解決につながるのか?
A. ヒューマンエラーの削減には非常に役に立つ。TO-BEの業務フローの記述にエラーチェックのルーティーンを上手に組み込めるといい。人間がエラーチェックする範囲をいかに減らすがポイント。

Q. BPMを推進する人材とは?
A. 業務部門のミドルマネジメント層が中心に進めるのが一番成果が出やすい。経営層などの方針と現場の個人レベルの作業を分断させずに、組織階層の壁を越えて取り組んだり、情シス部門の巻き込みなど部署間の連携をスムーズにすることで成果は大きくなる。それができるのはミドルマネジメント層。

次回の第2回業務プロセス改革分科会Day2は今回の続編とも言える内容で、BPMNの具体的な記述法についてハンズオンの勉強会を開催します。IMUGはメンバーの皆さんの要望に応え、業務プロセス改革分科会を含む三つの分科会を通じて、DXの推進に必要な能力を身につけていただくための幅広いプログラムを継続的に提供していく予定です。関心を持っていただいた方は、IMUGのコンセプトや活動内容の詳細について弊社ホームページをぜひチェックしてみてください。

(IMUG事務局編集部)
 
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